贅沢な寂しさ ~身分違いの結婚

「ママ。今日は バレエの日?」

「そうよ。結愛ちゃん バレエ好き?」

「結愛 バレエもピアノも 大好き。」

「そう。よかったわ。パパね 今日も 早く帰れるって。」

「わぁーい。結愛 バレエ 頑張って 帰ったら パパに見せてあげるの。」


結愛を 幼稚園に送る 車の中

笑顔で話す 結愛に 私も微笑んで。


今日は 早めに買い物をして

バレエ教室の前に 夕食の下拵えをしよう。


少し 手が込んだものを 作りたいけど。

悠樹さんは 何が食べたいのかな…


私の実家も 父の勤務が 不規則だったから

毎日 一緒に 夕食を食べていたわけじゃない。


子煩悩な父は 家にいる時は よく遊んでくれたし。

父に会えない日を 小さい頃は 寂しく思ったけど。


私は いつの間にか 

それが我が家だと 理解していた。


結愛も いつしか 悠樹の帰りが遅いことを

そういうものだと 理解していくのだろう。


母は 父のいない夜 心細くなかったのかな。

私と弟を 1人で育てながら 

不安にならなかったのかな。


誰だって…どんな家庭にだって 不安はあるし。

夫の愛を 信じられない人も いるのに。


私は 悠樹の愛を 信じられる。


寂しいなんて 思うのは やめよう。

美味しい夕食を作って

悠樹を 喜ばせよう。


少しだけ 前向きになれたのは

今日も 悠樹が 早く 帰れるから…





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