戦国占姫
第十二話 豪邸の女

 私は、わらしべ長者なのだろうか?
 ついに将軍様である。護国将軍と並列の「占姫」が肩書きとなった。
 (占姫と呼ばれることに慣れないとね)
 私だけの役職。帝から賜った。別にどうでもよかったのだが、執事達、メイドのために授かることにした。
 私は知っている。
 今まで、執事達は身元不明の女に仕えている者と陰口を言われていた。怒りをグッとこらえ、私のために耐えてくれていた。そんな彼等に肩身の狭い思いをさせてきた。
 彼等は、これからは堂々と胸を張っていい。帝からいただいた占姫の肩書き。大切に使わせていただく。
 この肩書きで彼等を守れたらいい。

 無事、御所から馬車は出発した。
 帝からお古の馬車をいただいた。「どこがお古なの?」と言いたくなるようなピカピカ。「もう新しい馬車があるからな」と気前がよかった。

 私は新居を見に行くことにした。
 役人に「こちらです」と案内された場所には「占姫邸」と書かれた木の板が門に取りつけられていた。
 (なんじゃこりゃー!)
 門をくぐり抜けると大豪邸。腰を抜かした。私は地面にお尻を打ちつけた。もう、開いた口がふさがらない。執事達は物件の内部を確認している。もう仕事モードだった。私は「ハハハ」と笑うしかなかった。
 (帝、ありがとうございます)
 私も早く慣れないとね。何せ、占姫だから・・・。

 私は意外と順応性がある。
 屋敷の中でティータイム。くつろいでいた。
 「・・・ところで占姫様。ホテルには帰らないのでしょうか?」
 猿顔の大臣が確認をしてきた。態度が違う。
 (・・・そうか。肩書きだよね)
 ヒデヨーシはオワーリ領の大臣だが、帝に任命された訳ではない。ノブナーガによって勝手に大臣に指名されていた。言わば平民が大臣を勝手に名乗っている状態。私は帝に直接、肩書きを授かった。身分が逆転したのだ。普通は直ぐにへりくだることはない。武士という生き物はプライドが高い。この大臣の長所である悪知恵が私を利用した方がいいと判断したのだ。
 (ゴマすりが上手なんだから・・・)
 この大臣を嫌いになれない。身元不明の女である私を大事に扱ってくれた。感謝している。多少は目をつぶらないといけない。
 「・・・そうね。一度戻りましょう」
 ノブナーガと会って話をしなくてはならない。占姫として生きていく。王様の所有物から卒業する。大丈夫、私には帝がついている。
 私は決心した。執事達と一緒に独立する。
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