戦国占姫
第十三話 強運の女

 馬車は再び動き出した。
 私とヒデヨーシを乗せて都を走っていた。
 ホテルに到着。
 「さぁ、占姫様。まいりましょう」
 ヒデヨーシは笑顔で先頭を歩いた。私はその後ろを歩く。残っていた荷物をまとめて馬車に詰め込んだ。
 (よし、後は・・・)

 いよいよ、ノブナーガと話をする時がきた。
 ヒデヨーシは一足先にノブナーガへ報告をしていた。
 「・・・ふん。所有物のクセに生意気な!」
 「・・・そうは申しましても王様。相手の後ろ楯は帝ですぞ」
 「・・・」
 帝にたてつく訳にはいかない。そんなことをすれば諸侯から攻撃を受けてしまう。どうしたら始末できるかを考えていた。
 「・・・そうか。これならば・・・猿よ。部下に命令せよ! 誤って弓を射ってしまったとな。ハッハッハ。誰にでも過ちはあるものよな」
 「・・・では、その通りにいたします」
 ヒデヨーシは部屋を出て部下に命令した。辺りをキョロキョロとする。部下以外に人は見当たらなかった。
 ソーッと部屋を出て、占姫の元へ急ぐ。息を切らしていた。
 「ハァハァ・・・占姫様。弓に気をつけてください。確かに伝えましたよ」
 慌てて部屋を飛び出す。何のことかサッパリ分からない。
 (何を慌てているのかしら?)
 私は部屋を出て、ノブナーガの元へ向かった。

 「よくぞいらっしゃった。さぁ、こちらへ占姫様」
 (な、何? この笑顔。・・・気味が悪い)
 何だか嫌な予感がした。それにヒデヨーシが言っていた「弓に気をつけろ」というキーワード。
 総合的に判断をすると、きっと私は暗殺されてしまうだろう。
 (なんとかこの部屋を脱出しないとね)

 「私はこの一団から抜けることにします。これからは都で暮らすことになります」
 この一団からの独立を宣言した。
 「・・・そうでしょうな。仕方がありません。分かりました。認めましょう」
 「ありがとうございます」
 「・・・では、祝いの舞いを披露させましょう」
 ノブナーガがパンパンと手を打つと一人の武将が部屋に入ってきた。腰に剣を帯同している。
 「それでは剣舞を披露しましょう!」
 武将は剣を抜き、ヒラリと舞うように剣を振る。
 舞いながらジワリと私に近づいてくる。すぐに分かった。私を殺す剣舞なんだと・・・。キラリと剣が光る。
 (あっ、マズイ)
 私は逃げ遅れた。剣が私を目掛けて振り下ろされた。
 ガキンと刃物と刃物がぶつかる音。
 私の目の前に一人の執事がいた。ジンが私を守ってくれた。
 「我が主、お怪我はありませんか?」
 「うん、大丈夫。ありがとう。・・・でも、どうして」
 「こんなことがあるかもしれないと、ウォッカが言っていたものですから影に潜んでおりました」
 「おのれー! ハンゾー。ワシに敵対するつもりか?」
 「・・・貴様は私の主ではない! 私の主は占姫様だけだ!」
 私は涙した。ジンは普段から何を考えているのか分からなかった。私を主人と言ってくれた。ジンと名づけたのもハンゾーが忍者だからだ。刃に心。刃=ジン。
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