戦国占姫
第十四話 武運の女

 ジンは剣舞の武将を切り捨てた。
 「ここを脱出するわよ」
 私はドアを飛び蹴り、部屋を出た。ウォッカとテキーラが私を迎えに来ていた。
 「ご無事でしたか。ジン、そんなのを相手にしていないで退くぞ!」
 ウォッカはジンに戦いを止めるように声をかけた。
 「分かった。主を連れて先に行け!」
 ジンは煙玉を床に投げつけた。煙が一面に蔓延する。スプリンクラーが作動した。この部屋で火縄銃は使えない。
 その隙にジンは私達に合流した。
 「お、追えー、逃がすな!」
 ノブナーガは兵士を連れて追いかけてきた。
 ウォッカは罠を仕掛けていた。逃げる時間を稼ぐためだ。先頭の兵士が縄に引っ掛かって転けた。次々とつまずく兵士達。将棋倒しとなっていた。ノブナーガは、それを踏んで追いかけてくる。
 (・・・しつこい男は嫌われるわよ)

 何とか馬車が見えてきた。リキュールが待機している。私が急いで馬車に乗り込もうとした。その時、弓を射った者がいた。弓は私とノブナーガの間に突き刺さった。射った者はミツヒーデだった。ノブナーガは止まった。
 「ノブナーガ、貴様は何をしたのか分かっているのか!」
 「・・・うるさいヤツだ! そんなことを言いに来たのか!」
 帝にケンカを売ることは想定の範囲内だった。いずれは帝を倒して、この国を手中に入れることがこの男の野望だった。
 「・・・ふん。まーいい、今日のところはワシが退いてやろう!」
 「待て! ノブナーガ。話は終わっていないぞ!」
 ノブナーガはホテルの裏口からオワーリ領へ悠々と帰っていく。ペコリとお辞儀をする大臣。手を振って去っていった。
 (・・・サヨウナラ、大臣)
 ミツヒーデとノブナーガの因縁は、これをきっかけに始まっていく。

 私は難を逃れた。
 屋敷に移動し、今日の出来事を確認していた。
 「今日は大変だったわね。皆のおかげで私はここにいます。ありがとうございました」
 私は深々と頭を下げた。
 「・・・ミツヒーデは何故あのホテルにいたの?」
 「それはですね。リキュールさんが迎えに来たのですよ」
 「そうなんだ。ありがとう。助かりました」
 「間に合ってよかったです。・・・では、私は帝に報告がありますので、ここで失礼します」
 ミツヒーデは去っていった。

 「・・・私が説明しましょう」
 ウォッカが口を開いた。
 「・・・ノブナーガが野望を秘めていたのは知っていました。今回、都に来たのも偵察を兼ねてのことでしょう。我が主を利用することも分かってました」
 「・・・私は貴方に囮として泳がされていたのね。酷くない? 私は貴方の主よね?」
 「失礼しました。後で罰は受けます」
 (・・・まったく困った人ね)
 「・・・取りあえず、話を続けて」
 「はい。占姫様がホテルに黙って行かれたので、私はジンにホテルに向かうように言いました」
 「それで突然ジンが現れたのね。あれは忍術なの?」
 私はジンに聞いてみた。あれは始めて見る術だった。
 「『影縫い』という術です。主を守れて光栄です」
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