戦国占姫
第十五話 南国の女

 ウォッカの話は続く。
 「ジンが占姫様を守っている間に脱出の作戦を考えていました。罠を仕掛け、テキーラとお迎えにまいった次第です」
 「・・・そう。その間にミツヒーデをリキュールが呼びに行ったのね」
 「そうです」
 リキュールが返答する。私は疑問点があった。
 「でも、どうしてミツヒーデだったの?」
 「他の役人には信じてもらえなかったのです。たまたま通りかかったミツヒーデ様が『私が行こう』と言ってくださりました」
 「そうだったのね」
 私はウォッカの機転で助かった様子。

 このウォッカという男。名前はカンベー。
 いつも私に辛口の意見を言ってくるので、ウォッカと呼ぶことにしたのだった。
 (それにしても、私にはもったいないよね)
 彼等は執事やメイドをしていなければ、「天下にその人あり」と言われていただろう。
 彼等の将来をダメにしているのかもしれない。
 私が帝配下の有名武将となれば、彼等に将来を約束できる。「占姫」の名前を天下に轟かすのだ。
 (今後の方針は、それで行こう)
 そう決心した矢先のことだった。ウォッカが執事達を代表してしゃべりだした。
 「我々は占姫様に仕えることができて、幸せ者であります。これからも末長く、よろしくお願いします」
 まさか、ウォッカからそんなことを言われるなんて・・・私は涙を流した。涙が止まらなかった。
 「・・・ありがとう」
 そう言うのが精一杯だった。今は上手く伝えることができないが、いつか彼等に伝えるつもりだ。

 次の日、私は帝から呼び出された。
 「昨日は災難だったな。全国の諸侯に『謀反者、ノブナーガを討て』と勅命を出した。ノブナーガの勢力を一掃する。安心せよ」
 「ありがとうございます」
 「・・・今日呼び出したのはな。ソナタに護南将軍を拝命しようと思って呼び出したのだ」
 「・・・護南将軍?」
 「あぁ、この国の南国を守ってもらいたい。今から移動をするのだ」
 (へっ? 何で? 私、何かしました?)
 どう考えても分からない。企業で言うと左遷だよね。
 「・・・拝命いたします」
 「そうか、そうか。行ってくれるか」
 「・・・はい」
 「それでは今から式を始める」
 帝からの特別の配慮だった。都は戦場となるので「南国に避難していろ」と言うことだった。

 突然の出来事をのみ込めなかったが、私は馬車に乗り込み出発した。
 (南国か・・・)
 ノンビリとした旅だった。行く先々の領主から接待を受けた。どの領主も「帝によろしく」と伝えられた。
 接待を受けたのだから仕方がない。ウォッカには、話の内容をメモに取らせておいた。リキュールには食事のレポートを頼んだ。ジンには例の影縫いで護衛を任せ、テキーラには武将と縁の繋がりが増えるように頼んだ。顔見知りが増えるといい。
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