戦国占姫
第十六話 護南の女

 数ヶ月の旅だった。船を乗り継ぎ、やっとたどり着いた。
 その土地の領主に案内されたのは島にある御殿だった。帝が保養目的で訪れる屋敷が私の仕事場だった。
 (よし、早速仕事よ!)

 「はーっ」
 ため息しか出てこない。暇・・・。
 (・・・よく考えたらそうよね)
 この土地の領主が仕事をするのだ。私に仕事が回ってくるハズがない。「職場兼屋敷」と言われた時点で気づくべきだった。

 あまりにも暇だったので、視察をすることにした。
 その土地の領主がキチンと仕事をしているのか、お忍びで調べることにした。私が出向こうとしたのだが、ウォッカに止められた。ジンが私の代わりに情報を集めてくる手筈となる。
 (・・・適任者よね)
 ジンは忍者。これ程相応しい人材はいない。私は報告を待つことにした。
 この土地の領主は暗愚だった。
 民は飢えているのに、身ぐるみを剥ぐような重い年貢。自分だけブクブクと私腹を肥やす。怨嗟の声は武力で抑え込んでいた。民の不満は爆発寸前。打倒領主の計画が立てられているらしい。私はこの領土の長達を集めて計画を止めるように説得した。私に計画が漏れているのだ。領主側にもバレているハズ・・・。
 暴徒と化した民を鎮圧目的に殺害するだろう。見せしめとして・・・。
 長達は聞く耳を持たなかった。
 「すでにサイは投げられた」と言うのだ。
 私は無力だ。占姫の肩書きは通用しなかった。
 私は屋敷に帰り、ウォッカと作戦を考えた。
 ウォッカは稀代の軍師だった。
 バレている計画を利用して、「領主を討つ」と言うのだ。
 またしても、私は彼の駒だった。次々と駒を作り出して配置していく。領主を誘き寄せるのが私の役割。
 ウォッカが執事とメイドを使い、長達が到着するよりも早く、領主を討ち取る作戦。

 決戦の朝は静けさを保っていた。
 私達は朝焼け前に島を移動した。屋敷には藁人形を座らせておいた。私が屋敷にいると見せかけるためだ。
 ウォッカの作戦に抜かりはない。領主のいる街へ無事到着した。ジンの調査で空き家があるのが分かっていた。そこで朝が明けるのを待った。

 領主の屋敷前。
 私は一人、門の前で立っていた。門番が私を通さないからだ。
 「私は護南将軍・占姫。領主を呼びなさい。私を誰だと思っているの? 帝直属の将軍よ! 早くしなさい!」
 我慢ができなかった。門番が動かなかったので、強硬突破。テキーラが門番二人を斬り捨てた。
 次々と兵士が出てくる。
 (この屋敷のどこに隠れていたの?)
 「待て!」
 ようやく領主が奥から現れた。
< 16 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop