戦国占姫
第六話 二万の女
まるで時が止まっているかの静けさ。
その結果に固唾を飲んでいる。
「・・・出ました!」
「それでどう出たのだ! その『占い』とやらは?」
「・・・」
「早く言え!」
「まだ王様の命は亡くなりません!」
「ほう、我が軍は三千しか無いのだぞ! 二万に勝てると言うのか?」
「・・・それは分かりません。ただ、王様の命はこの戦で亡くなりません。今まで私の占いが外れたことはありません」
私は自信を持って断言した。先程までの『か弱いウサギ』だった姿ではない。タロットカードが私の運命を切り開く。王様は笑うしかない様子。
「ハハハ、ワシはどうやら神様を拾ったようだ! 者共、戦の準備を致せ! こちらには兵力二万の女神がついておる。ワシについてまいれ!」
「ハッ!」
部下達は急いで部屋から出ていった。
ポツンと私は取り残された。王様と二人きり。
「お前は・・・いや、貴女様はここでお待ちください! 必ずや勝利をお持ち致しましょう」
王様は従者を引き連れて、戦場へと駆けていった。鎧兜を着た恐竜が馬に股がっている姿は、元の世界では見られない光景だった。実は、その王様は恐竜ではなく魔王と呼ばれていることを知ったのは後のこと。
(お待ちくださいか・・・)
ガランとした建物からは逃げられそうだったが、止めた。後で追手を差し向けられる。そうなれば私の命はどうなるか考えなくても分かる。キョロキョロと辺りを見た。私の監視する役人は残っていた。
(それはそうだよね)
身元の分からない女に信用があるハズがない。
「ミツナーリ、あなたは戦場へ行かないの?」
「私はあなたの監視と護衛に残っています」
「・・・そう。お水をいただいてもよろしいかしら」
「分かりました」
ミツナーリがパンパンと手のひらを打つと年老いた女性が現れた。
「こちらの方にお水を持ってきてあげなさい」
「はい、かしこまりました」
その女性はゆっくりと歩いてお水を汲んできた。
「ありがとうございます」
その女性に一礼をして、いただいた。緊張から私は喉がカラカラだった。何でもない水が聖水のように身体を癒す。喉を潤す。ひと息つくことができた。
「・・・一つ質問してもよろしいですか?」
ミツナーリが私に尋ねた。
「もちろん、いいわよ」
「貴女は何故、王様の命が尽きないことを分かったのですか? 我が軍は三千、相手は二万ですよ。普通なら勝ち目はありません。・・・でも貴女は王様が死なないことを断言した。その意味が分からないのです」
「・・・さぁ? 私にも答えられないわね。カードがそう教えてくれたとしか説明できないわよ。・・・そうだ。あなたのことも見てあげるわ」
さっさとカードをシャッフル。
「先程とは違うのですね」
「先程は人が見ていたからね。ちょっと大げさにしてみたの。でも、導かれた結果は変わらない。決して手抜きでは無いわよ」
「・・・そうですか」
「うん、分かったわ。あなたは、いずれ大臣になるわ。努力することね」
「私が大臣ですか・・・。分かりました、努力します」
私はいずれ天下を二分するような戦いで、彼が命を落とすことを伝えなかった。
まるで時が止まっているかの静けさ。
その結果に固唾を飲んでいる。
「・・・出ました!」
「それでどう出たのだ! その『占い』とやらは?」
「・・・」
「早く言え!」
「まだ王様の命は亡くなりません!」
「ほう、我が軍は三千しか無いのだぞ! 二万に勝てると言うのか?」
「・・・それは分かりません。ただ、王様の命はこの戦で亡くなりません。今まで私の占いが外れたことはありません」
私は自信を持って断言した。先程までの『か弱いウサギ』だった姿ではない。タロットカードが私の運命を切り開く。王様は笑うしかない様子。
「ハハハ、ワシはどうやら神様を拾ったようだ! 者共、戦の準備を致せ! こちらには兵力二万の女神がついておる。ワシについてまいれ!」
「ハッ!」
部下達は急いで部屋から出ていった。
ポツンと私は取り残された。王様と二人きり。
「お前は・・・いや、貴女様はここでお待ちください! 必ずや勝利をお持ち致しましょう」
王様は従者を引き連れて、戦場へと駆けていった。鎧兜を着た恐竜が馬に股がっている姿は、元の世界では見られない光景だった。実は、その王様は恐竜ではなく魔王と呼ばれていることを知ったのは後のこと。
(お待ちくださいか・・・)
ガランとした建物からは逃げられそうだったが、止めた。後で追手を差し向けられる。そうなれば私の命はどうなるか考えなくても分かる。キョロキョロと辺りを見た。私の監視する役人は残っていた。
(それはそうだよね)
身元の分からない女に信用があるハズがない。
「ミツナーリ、あなたは戦場へ行かないの?」
「私はあなたの監視と護衛に残っています」
「・・・そう。お水をいただいてもよろしいかしら」
「分かりました」
ミツナーリがパンパンと手のひらを打つと年老いた女性が現れた。
「こちらの方にお水を持ってきてあげなさい」
「はい、かしこまりました」
その女性はゆっくりと歩いてお水を汲んできた。
「ありがとうございます」
その女性に一礼をして、いただいた。緊張から私は喉がカラカラだった。何でもない水が聖水のように身体を癒す。喉を潤す。ひと息つくことができた。
「・・・一つ質問してもよろしいですか?」
ミツナーリが私に尋ねた。
「もちろん、いいわよ」
「貴女は何故、王様の命が尽きないことを分かったのですか? 我が軍は三千、相手は二万ですよ。普通なら勝ち目はありません。・・・でも貴女は王様が死なないことを断言した。その意味が分からないのです」
「・・・さぁ? 私にも答えられないわね。カードがそう教えてくれたとしか説明できないわよ。・・・そうだ。あなたのことも見てあげるわ」
さっさとカードをシャッフル。
「先程とは違うのですね」
「先程は人が見ていたからね。ちょっと大げさにしてみたの。でも、導かれた結果は変わらない。決して手抜きでは無いわよ」
「・・・そうですか」
「うん、分かったわ。あなたは、いずれ大臣になるわ。努力することね」
「私が大臣ですか・・・。分かりました、努力します」
私はいずれ天下を二分するような戦いで、彼が命を落とすことを伝えなかった。