ずっと、そばに

私、このまま死んじゃうのかな…?


だんだんと薄れてくる意識。


翔馬と生きていたいけど、私の体が無理かも…

限界かもしれない。



今、なんとかでも喋れるうちに、翔馬に感謝の気持ち伝えたい。


「しょ…う…ま…、ハァ…ウッ…………あり…が…とう
みじ…か…い……あいだ…だっ…たのに… たのし…かった 」


「陽菜、何が短い間だ。そんな縁起でもないこと言うな

俺が助けるから。手術するから 」




私だってこんな最期の別れみたいなこと言いたくない。


翔馬の『助ける』って言葉だって信じてる。


でも、万が一何も言えないまま死んじゃったら

絶対後悔するから。


死んだあとに感情なんて残るのかわからないけれど…



「先生っ、手術室の準備してます。

秋元さん、ストレッチャーに乗せますね 」


翔馬先生がナースコールを押してからすぐ、慌ただしく数人の看護師さんが入る。


…強烈な胸の痛みも

…回りにたくさんの医療スタッフがいるのも

…これからされることも。


すべてが恐ろしいもの。



それでも、ストレッチャーに乗せられる時に手に感じた温かみだけは…。

ものすごく安心するものだった。


そして、手の温かいものに少し触れられた直後、

私は眠るように意識を失った。





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