救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~

信頼感

その後、血液検査、エコー、造影CTなどの検査結果について詳細な説明があり、各種同意書の内容と記載方法、手術の合併症、予後に関する説明がなされた。

「この後、麻酔科医が来て全身麻酔の説明をしてもらいますが、ご希望があれば外科医と同様、麻酔科医も選択できます。しかし、残念ながら、すでに定例手術の執刀医になっている者、院内不在の者、現在実施中の手術において主麻酔担当となっている麻酔科医は選べません。聖川さんの執刀医として現在選択可能な者はこの10名になります。お決めになり次第、ER看護師に申し出て下さればいつでも手術室に入室可能な準備を整えておきます」

さすが、世界でも最高峰とうたわれるセントヒルズホスピタルのシステムだ。

緊急事態でもできるだけ患者の希望に寄り添う姿勢、選択肢の多さ。

先ほどから、光治は、真のホスピタリティに触れた気がして感心しきりだった。

更に、嫌な顔もせず、懇切丁寧に分かりやすく説明を重ね、テキパキと場を仕切るあやめの仕事ぶりに光治のあやめに対する好感度はうなぎ登りだ。

そばにいる博志も同様の気持ちのようだった。

一通りの説明が済み、光治はようやく手元のパンフレットに目を通すことが叶った。

そこには、あの若さ(童顔)でありながらも数々の経験と知識を手にしているあやめの輝かしい経歴が掲載されていた。

期待され続け、その期待の分だけ努力してきた御曹司の光治ですら尊敬の念を抱かずいられない、患者からの賞賛のことばの数々(おそらく口コミにあたると思われる)。

「・・・執刀医と主治医はあやめ先生で。後の面々はあやめ先生の選択にお任せします」

見知らぬ他人である光治に迷うことなく手を差し伸べられる勇気。

権力者の息子と知ってからも態度を変えない一貫した節度と対応。

ここまでの短い付き合いだけを鑑みても、光治に残された選択肢は一つ。

光治は迷わず゛童顔゛だけど、予想以上に中身のつまった゛あやめ先生゛に命を預けることにした。

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