救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「聖川さん、これから手術・入院という流れになりますが、身の回りのお世話をさせて頂く看護師について何かご希望がございますか?」
手術搬入までの待機中、ベテランナースとともに新人らしきナースが光治の部屋に入ってきた。
手には手術衣やディスポーザブルの下着があり、これから着替えが必要なのだとわかった。
先程までは痛くて動けなかったが、確定診断がついてからは強めの鎮痛剤を開始してくれたお陰で今では一人で動けそうな気すらしていた。
「ある程度のことは自分でできますが・・・」
光治は、ちらりと二人に目を向け反応を見る。
「今は痛みがないかもしれませんが、病気が治った訳ではありません。ご希望があれば担当を男性看護師に限定することもできますがそうされますか?」
光治の言葉の意味を正確に読み取ったベテランナースの貫禄と接遇はさすがだったが、新人ナースはチラチラと光治を見て恥ずかしそうに頬を染めており危機感が勝った。
ここは天下のセントヒルズホスピタル。
゛ここで働く職員に公私混同する者はいない゛
そう信じたいが、光治にはこれまでにも一流と呼ばれる企業や団体、個人からあからさまに過剰なアプローチを受けて裏切られたと感じる経験が多々あった。
自信過剰かもしれないが、入院中の身の回りの世話は男性看護師に任せた方が無難かもしれない。
まあ゛男性だからといって安心゛という時代ではないが、短い期間の付き合いなら降りかかる問題は最小限に抑えられるに違いない。
「お願いできますか?」
と、やんわりと、しかしはっきりと男性看護師を希望する。
パンフレットには、様々な要望にお応えしますとの文言が記載されていた。
もちろん、不適切な理由での個人指名にはお答えできません、との文言も付け加えられていたが、それはスタッフ側をセクハラやパワハラから守るためなのだろう。
光治の依頼を聞いて、あからさまに残念そうな顔をする新人ナース。
またまだ教育が必要だな、と光治は感じたが余計な口を挟むことはやめた。
『それなら、あやめ先生も女性ですけど交代しなくていいのですか?』
と、遠慮のないスタッフなら聞いてきそうなものだったが、さすがにそこまでグイグイ入り込んでくることはなかった。
これまでの光治なら、無難に主治医も男性を選んだだろう。
だが、あやめへの感謝の気持ちと絶対的な信頼が胸に宿る今、光治には危機管理意識よりもそれらが上回っていた。
その後無事光治のもとに派遣された男性看護師に着替えを手伝ってもらいながら、手術の準備は万全に整っていった。
「それでは入室しますね」
「頑張ってこいよ」
手術室の前で博志と別れ、男性看護師に付き添われて手術にのぞむ。
「よろしくお願いします」
「目が覚めたらお部屋ですよ」
手術台の上に移動したあと、術衣に着替えたあやめの顔を見てようやくホッとした。
あやめの笑顔に安心するなんて、光治も予想以上に緊張していたようだ。
「ではお薬で眠くなります・・・」
麻酔科医のそんな言葉を最後に、光治は夢の世界へ誘われて行った。
手術搬入までの待機中、ベテランナースとともに新人らしきナースが光治の部屋に入ってきた。
手には手術衣やディスポーザブルの下着があり、これから着替えが必要なのだとわかった。
先程までは痛くて動けなかったが、確定診断がついてからは強めの鎮痛剤を開始してくれたお陰で今では一人で動けそうな気すらしていた。
「ある程度のことは自分でできますが・・・」
光治は、ちらりと二人に目を向け反応を見る。
「今は痛みがないかもしれませんが、病気が治った訳ではありません。ご希望があれば担当を男性看護師に限定することもできますがそうされますか?」
光治の言葉の意味を正確に読み取ったベテランナースの貫禄と接遇はさすがだったが、新人ナースはチラチラと光治を見て恥ずかしそうに頬を染めており危機感が勝った。
ここは天下のセントヒルズホスピタル。
゛ここで働く職員に公私混同する者はいない゛
そう信じたいが、光治にはこれまでにも一流と呼ばれる企業や団体、個人からあからさまに過剰なアプローチを受けて裏切られたと感じる経験が多々あった。
自信過剰かもしれないが、入院中の身の回りの世話は男性看護師に任せた方が無難かもしれない。
まあ゛男性だからといって安心゛という時代ではないが、短い期間の付き合いなら降りかかる問題は最小限に抑えられるに違いない。
「お願いできますか?」
と、やんわりと、しかしはっきりと男性看護師を希望する。
パンフレットには、様々な要望にお応えしますとの文言が記載されていた。
もちろん、不適切な理由での個人指名にはお答えできません、との文言も付け加えられていたが、それはスタッフ側をセクハラやパワハラから守るためなのだろう。
光治の依頼を聞いて、あからさまに残念そうな顔をする新人ナース。
またまだ教育が必要だな、と光治は感じたが余計な口を挟むことはやめた。
『それなら、あやめ先生も女性ですけど交代しなくていいのですか?』
と、遠慮のないスタッフなら聞いてきそうなものだったが、さすがにそこまでグイグイ入り込んでくることはなかった。
これまでの光治なら、無難に主治医も男性を選んだだろう。
だが、あやめへの感謝の気持ちと絶対的な信頼が胸に宿る今、光治には危機管理意識よりもそれらが上回っていた。
その後無事光治のもとに派遣された男性看護師に着替えを手伝ってもらいながら、手術の準備は万全に整っていった。
「それでは入室しますね」
「頑張ってこいよ」
手術室の前で博志と別れ、男性看護師に付き添われて手術にのぞむ。
「よろしくお願いします」
「目が覚めたらお部屋ですよ」
手術台の上に移動したあと、術衣に着替えたあやめの顔を見てようやくホッとした。
あやめの笑顔に安心するなんて、光治も予想以上に緊張していたようだ。
「ではお薬で眠くなります・・・」
麻酔科医のそんな言葉を最後に、光治は夢の世界へ誘われて行った。