救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~

吊橋効果だと思うのですが・・・。

患者と看護師、患者と医者・・・。

そこには甘く秘めた恋心・・・。

それはTLや女性が好む小説・漫画といった分野では鉄板のネタらしいのだが、現実はそんなに簡単にはいかないらしい。

そもそも、このホテルのようにゴージャスで一流の病院では患者様はお客様でしかない。

患者とスタッフの恋愛や個人的な付き合いなどもってのほか、誠心誠意役目を果たす、という信念は、病院が掲げた理念からもうかがえる。

だからこそ、あやめの一貫した他人行儀な光治への態度は至極正しいと言えるのだが、好意を持つ一個人としては日々物足りなさが募るばかりであった。

かといって゛誰か゛に構って欲しいわけではない。

男性看護師を女性看護師に代えて入院生活を楽しみたい、などと不埒なことを考えているわけでも決してない。

そう、光治は、゛あやめ個人゛と親しくなりたいと思い始めているのだ。

それも恋愛的な意味で・・・。

そのためにはどうしたらいいか・・・。

そう考えているうちに、あっという間に退院日が迫ってきていた。

考えあぐねるうちに獲物が逃亡・・・何てことにならないように策を練らなければ・・・。

光治はため息をつくと、枕元のナースコールを押した。

「伺います」

これから対峙するのは、光治の受持ち看護師の一人、早川だ。

早川の昼休みの時間に、光治は自らが入院する特別室でランチをしようと誘った。

もちろん師長の許可は取っている。

まずは情報を制することが勝利への近道。

光治の魔の手は、着実にあやめに迫っていた・・・。
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