救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
゛あやめの行くところに事件あり゛

と、以前、抹茶専門茶処、゛まつや゛の店員でありあやめの友人でもある゛つるりん゛に言われたとおり、あやめは別名゛急患ホイホイ゛と呼ばれている。

あやめにとって不名誉なのか名誉なのかはわからないが、居合わせる急患にとっては迷惑なだけの話かもしれない。

旅行にいけば、空港や駅で高確率に傷病者に遭遇する。

飲み会に参加すれば、他の団体客のいざこざや客がアンコール中毒で倒れる事態に巻き込まれる。

そうこうしているうちに、

段々と医師としての度胸がつき、今でこそ冷静に対処できるようになってきたものの、急患というからにはいきなり事態が急変することもあるわけで・・・。

光治の症例も例外ではない。

光治から感じた不審者を見るような視線。

高校生のようなあやめを見て、医師としての技量を測りかねているといった疑惑の目。

浴びなれた視線ではあったがやはり気は滅入るものだ。

まだまだ男社会だな、と思わせる医師独自のの特殊な世界でもあやめは懸命に生きてきた。

他の医師やスタッフ、患者から、女性蔑視の言動や態度をとられることも一度や二度ではなかった。

だが、それ以上にやりがいと生き甲斐を感じることができたからこの仕事を続けていられる。

とはいえ、大事な局面で、第一印象が最悪なところからの起死回生はなかなか骨がいることであるのも事実。

そんなひと手間、本来ならば遠慮したいところであるが、外見を今以上に変えることは困難。

真摯に言葉と態度で伝えていくしかない。

だが、その気持ちを上手く表現しきれないうちに、今回は先方(イケメンエリート商社マン(仮))が途中で気を失ってしまった。

説得しきれずに事を進めたのは不徳の致すところだが、結果的には不可抗力といえよう。

そう、決して無理やり運んだわけではない、・・・うん。

これまでの経過を振り返り、あやめは無理やり自分を納得させ退院サマリーを完成させた。
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