救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
なんだか、話がおかしな方向に進もうとしている。

どう湾曲して解釈すればそうなるのだろう?

あやめは呆れつつも、

「生活指導の一環ですから。とにかく一週間後の再診の際に元気で再会できることを切に願っております。お大事に」

と、早々に話を切り上げて光治の部屋を立ち去ろうとした。

「待ってください」

あやめが入り口のドアを開こうとしたその時、背中から大きな何かに覆い被さられ行く手を遮られた。

゛こ、これは俗にいう壁ドンなのでは?゛

正確には背中を向けているので壁ドンではないのかもしれない。

「ど、どうしました?何か質問でも?」

出来るだけ事務的になるよう意識して言葉を発する。

今日は退院なので、気を抜いて男性看護師は同伴してこなかった。完全なる失態である。

そう思っていると、何故だか155cmしかないあやめの顔の横に180cm以上もある光治の顔が近づいてくるではないか・・・!

゛ち、近いわ!゛

内心、心臓は早鐘を打ち限界MAXであったが、

「この体勢はセクハラに値するかと・・・」

「いえ、手続き上、僕はすでに退院しているので、今は患者ではなくただの恋する男です。双方の同意があればセクハラには値しないかと」

「はっ?患者でないなら不審者ですよ?同意もしてませんよね?」

意味のわからない理屈に、あやめは思わず振り返って光治を非難してしまい、意図せず壁ドン体勢を完成させてしまっていた・・・。
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