救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「この方が・・・。本当に可愛らしいですが、医師としては意外性の塊のような方ですね」

「そうだろう?そこがまた素晴らしいんだ」

゛どうやら我が主は、この女医に骨抜きにされてしまったらしい゛

゛もしくは全身麻酔をかけられて性格が変わってしまったとか・・・?゛

田中がそう思いたくなるくらい、入院前と後では光治の雰囲気と態度は変わっている。

ここまで光治に影響を与えた人物。

田中は心底興味を覚えた。

「田中。これからは意識の改革が必要だ。セントヒルズホスピタルのシステムや勤務体制を目の当たりにして、オフィス部門も改善の余地が大いにあると実感した」

真剣に語る光治に、田中は納得したというように頷き返す。

「手始めに、僕から手本を示すことにする。極力残業はしない。週休もしっかりとる。プライベートを充実させてこそ部下を思いやる心も育つと言うものだ。そうだろう?」

光治は得意げにいうが、それは、田中や光治の父・博志が、体を壊してまで仕事に没頭する光治に口を酸っぱくして言い聞かせてきたことにほかならない。

「左様でございますか。私としては歓迎すべきことですので何の文句もございません。むしろ光治様をそのようなお考えに導いてくれださったその女医様に感謝申し上げたいくらいです」

「あやめ先生は欲がないんだ。そんなことは望んじゃいないよ」

「あやめ様とおっしゃるのですね?」

「ああ、杜若あやめさん。どちらもアヤメ科目の花の名前だ。可憐な彼女にぴったりな名前だ。しかも知ってるか?カキツバタの花言葉は゛幸せはあなたに来る、贈り物、賢さ゛なんだ。アヤメにいたっては、゛信頼゛゛情熱゛゛優しさ゛。名は体を表すって言うけど彼女ほどそれを体現している人はいないんじゃないかな」

< 26 / 101 >

この作品をシェア

pagetop