救われ王子にロックオン～溺愛（お礼）はご遠慮させて頂きます～

「優しいご主人様で良かったですね。それでは診察をしましょう。体に触りますね。不快なことがあったらおっしゃって下さいね」

あやめは田中の脈を測りつつ、じっと表情を観察した。

脈を測っていた手を離すと、両手で耳の下から顎、首、鎖骨にかけて触診していく。

続いて目や口の中を観察してから横になってもらい、胸部、腹部、四肢を丁寧に診察していった。

「田中さん、最近、めまいや動悸がしませんか？」

「・・・？ええ、そう言えばたまにそのように感じることがございましたね」

あやめは、臥床したままの田中の横で真剣な表情をして告げた。

「短い心電図では、不整脈を確実にキャッチできないこともあります。実際、先程行った心電図には異常所見は現れていませんでした。脈診と診察の結果から、田中さんはⅡ度の房室ブロックがあるのではないかと思われます。一度ホルター心電図（24時間心電計をつけて行動の記録する検査）と心エコーをおすすめ致します。このあと、そのまま循環器の専門医をご紹介して更なる精密検査を受けることもできますがいかがなさいますか？」

通常、房室ブロックは心電図所見から判断される。

運よく不整脈が12誘導心電図でキャッチされればいいが、無症状の時には見過ごされることが多い。

神がかり、だと思われても仕方がないが、あやめは脈診と触診でおおよそのことがわかる。

めまいや動悸、息苦しさといった症状が時折みられるという問診からも、あやめはほぼ確信を持って田中に診断結果を告げたのだ。