救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「ええ。お願い致します。いつまでも仕事を休んで光治様にご迷惑をおかけするわけにはいきませんので。その房室ブロックというのは放っておけば死に至る病気ですか?」

「場合によっては。脈が欠落する度合いや症状によって変わってきますが、ペースメーカーという機械を皮下に埋め込むこともあります。原因は不明なことが多いのですが、まれに心疾患が隠れていることもありますので精密検査をおすすめしています」

「わかりました。ご紹介よろしくお願い致します」

田中は診察台から起き上がると、深々とお辞儀をした。

「今から循環器のドクターに連絡致しますのでしばらくお待ちくださいね。ご心配はいりませんよ。名医でお優しい先生ですから」

パソコンのキーボードを叩きながら、ニコニコと微笑み田中を励ますあやめ。

田中は予想外の結果を聞かされながらも、動揺も見せずに、穏やかにあやめの様子を伺っていた。

「はい、それでは、次は循環器センターに行ってください。健診の全体を通して何かご質問はございますか?」

「いえ、健診については何もございません。ですが・・・」

言いづらそうに眉をひそめる田中の様子が気になる。

まるで捨てられた子犬のような怯えが見え隠れして・・・とても気になる。

その姿が、実家の祖父と重なって放っておけないのだ。

「何でもいいですよ?ご心配なことがあったらおっしゃって下さい。相談にのります」

「本当でございますか?」

キラキラとした子犬のような目があやめの胸を貫いた。

「ええ、構いません」

あやめは力強く大きく頷いた。

「それは」

「それは?」

「光治様のことでございます」

゛・・・ハイ、謀られたー゛

あやめはようやく気がついた。

この人はただのおじいさんではない。

聖川代々当主の参謀的なポジション。

敵の手の内にいる人間なのだと・・・。
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