救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
それは、光治が抹茶のケーキを無事にゲットし、あやめの待つテーブルに戻ろうとした時だった。

数メートル先のテーブルに腰かけるあやめのそばに、派手な浴衣で身を包み目下のものを見下すような視線を隠そうともしない傲慢そうな女性が立っていた。

不穏な空気を感じて、光治が思わず駆け寄ろうとしたとき、後ろから何者かに腕を引かれ行く手を阻まれた。

田中だった。

料理は持っていない、もちろん抹茶も。

゛何しに行ってたんだ?・・・って違う、今はそんな場合ではない゛

「田中、なぜ止めるんだ。あやめさんを助けに行かないと」

「しぃ・・・今はただ黙って様子を伺うのです。深刻な事態になったなら躊躇わずに駆けつけましょう」

近くには、大人の男性二人の体が隠れる丁度いい大きさの四阿(あずまや)があった。

そこに身を隠して待つよう田中に誘導される。

盗み聞きをしているようで(実際しているのだが)気が咎めるのだが、言い出したら聞かない田中のことだ。

説得しようとするだけ無駄だろう。

しかし・・・この状況。

田中と二人で寄り添って゛家政婦は見た゛状態になっているのだが、誰かに見られるのではないかと思うと気が気ではない。

だが、目の前で繰り広げられるであろう女性同志のバトルからも目が離せないのも事実。

戸惑っているうちに、光治の目の前で決戦の火蓋は切って落とされたのである。
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