救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
女性の目的はやはりあやめの正体を探ることだった。

それだけではない。

光治の素性をあやめに晒して、二人の仲を裂こうとしたのか、それともただ単にあやめと光治のことを馬鹿にして蔑みたいのか。

いずれにしても、女性から感じるのは溢れんばかりの悪感情だけだった。

女性があやめに話した光治の出自に関する情報は概ね間違ってはいない。

光治の母が、以前グラビアアイドルという職種についていたことも、財産を持ち逃げしたことも事実だからだ。

そんな母親から生まれた光治を蔑んだ目で見ようが馬鹿にしようが個人の勝手だろう。

だが、そんな光治と一緒にいるだけで、純真で真っ直ぐなあやめが蔑まれるのは我慢ならない。

光治はその女性に文句の一つでも言ってやりたいと身を乗り出しそうになったが、またしても田中に止められた。

「情に脆く流されやすいあやめ様ですが、そんなに弱くはありませんよ」

光治よりもあやめとの付き合いは短いはずなのに、田中は彼女の何を知っているというのか?

光治はムッとしながらも反論をするのは止めた。

田中の人をみる目は間違いない。

光治は半信半疑ながらも、田中の指示にしたがって二人の会話を見守ることにした。

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