救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
一方的に敵意を露にしてあやめと光治のことを蔑んだ女性は、反論しないあやめに満足したのか意味ありげに笑っていた。

しかし、あやめにも彼女の態度に思うところがあったのだろう。

「まずは確認させてください」

そう言って、あやめは彼女と光治の関係について確認を始めた。

光治は改めて派手な浴衣の女性を見る。

痩せた体はモデル体型だと言えば聞こえがいいが、顔色は悪く不健康な印象だった。

真っ赤な口紅は浮いていてあまり似合ってはいない。

本人は光治の取引先の社長の娘と言っているが、このベリーヒルズビレッジにはそんな女性は腐るほどいる。

パーティーで会った・・・?

全く覚えていない。

否、光治は、これまであやめ以外の女性に興味を抱いたことはなくどんな女性であろうと印象に残ってはいない。

そんなことだから思い出せと言われても無理というもの・・・。

過去の出会いを振り返りながら、光治はこれまでに経験してきた他人とのやり取りについても考えずにはいられなかった。

これまでも光治はこうした悪意に晒されて続けている。

他の誰かに悪く思われてもいい。

しかし、

゛あやめさんに他人の口から聞かされたことだけで僕のことを判断されるのは本意ではない゛

光治がそう思って一声かけようと身を起こした時だった。

すかさずあやめは彼女に猛攻を加え始めたのだ。

口にしていることに証拠はあるのか?根拠はあるのか?理由もなく貶めるのなら名誉毀損に値するのだぞ?と。

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