救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「ふふ、ただの恋する男と親バカな執事だそうですよ」

しかも、あやめは光治と田中をそんな風に評価した。

聖川に媚びを売ったり、光治の出自を蔑んだりする者はいても、彼らを一個人として評価する者はまれだった。

自分が目で見たこと感じたことしか信じない。

身分や外見で他人を評価しないと、あやめは毅然として言い切った。

その姿は誰よりもかっこよく美しかった。

更に驚くべきことに、次の瞬間、あやめは彼女に対して、あやめ自身を外見だけで侮っていた事実を自覚させたのだ。

その上で、あやめは怒りに打ち震える女性の体を敬い、何か相談はないかと寄り添ったのである。

本当に根っからの医者なのだろう。

このご時世、モンスターペーシェントに悩まされる医療従事者も少なくない。

そんな中、万人に愛され評価されるあやめという医者は、悪意や敵意を上手に受け流し、どんなトラブルにも真摯に向き合ってきたのだろう。

光治はあやめの魅力を見せつけられ、ますます愛情(執着)を深めていくのだった。
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