救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「この人が光治の浴衣プリンセスか。想像以上に似合っているな」
「あやめさんは浴衣だけでなく白衣もスクラブも普段着も似合う。君は余計な想像をしなくていい」
「おいおい、デザイナーに浴衣を特注しておいて無茶を言うなよ」
親しげな様子から、光治が隆之介に対してかなり心を許しているのがわかった。
普段の丁寧な口調から、光治には心から気持ちを許せる存在が田中以外にはいないのではないか、と内心あやめは心配していたのだ。
「涼香、これでわかっただろう?僕が作っていたのはこいつに頼まれていた特別な浴衣なんだって」
「だって若旦那様、とても楽しそうにデザインなさっていたからてっきり特別な女性に贈るものだとばかり・・・」
「特別なことには変わらないよ。幼い頃からの親友にやっときた遅い春だ。応援しないわけにはいかないだろう?」
一体゛ただの恋する男゛はどこまであやめに関する話題を提供しているのだろうか?
あやめはなんだか頭が痛くなってきた。
「ほら、涼香。お邪魔虫は退散しよう。昔から゛人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ゛って言われるくらいなんだから光治なら爆弾を落としかねない」
隆之介に諭されてシュンとする涼香はただの恋する女だった。
「あやめさんでしたか?今日は嫌な思いをさせてしまって本当に申し訳ない。だが、浴衣に免じて今後とも僕らとお付き合いを継続願いたい。お詫びにその浴衣は無料で差し上げますから」
「お断りします。この浴衣はあやめさんへの僕からの気持ち、はじめてのプレゼントなんだから」
タダであげる、という隆之介の申し出を即座に断る光治は、損得勘定ではなく気持ちを優先する人物なのだろう。
「ごめん、ごめん。冗談だよ。僕からは後日別の着物を贈ることにしよう。そうだ、あやめさん、今度わが社の着物モデルに・・・」
「断る、と言っていますよね?」
キレ気味の光治に背中を押されその場を追い出された隆之介は、最後まで光治の溺甘ぶりをからかっていたようだった。
「あやめ様、思わぬ邪魔が入りお待たせして申し訳ありませんでしたが、そろそろお料理と抹茶のおもてなしが届きます。更にこちらには光治様がわざわざ買いに出掛けた抹茶のケーキもございます。余計なことは忘れてしばし光治様とご歓談頂けないでしょうか」
「わかりました」
田中にエスコートされながら、再度特別席に腰かけるあやめ。
この執事にかかると、あやめは一切抵抗する気力を失う。
叱られた子犬のような潤んだ目は、ふるさとの祖父の印象と重なるだけでなく、ずっと昔に拾って育てていた保護犬にもそっくりだったからだ。
あやめが苦笑していると、すぐ近くに料理の載ったワゴンを押す男性の姿が目に入った。
気づけば昼以降、あやめは何も口にしていない。
美味しそうな香りにあやめが空腹を自覚した時、時計はすでに20時をさしていた。
「あやめさんは浴衣だけでなく白衣もスクラブも普段着も似合う。君は余計な想像をしなくていい」
「おいおい、デザイナーに浴衣を特注しておいて無茶を言うなよ」
親しげな様子から、光治が隆之介に対してかなり心を許しているのがわかった。
普段の丁寧な口調から、光治には心から気持ちを許せる存在が田中以外にはいないのではないか、と内心あやめは心配していたのだ。
「涼香、これでわかっただろう?僕が作っていたのはこいつに頼まれていた特別な浴衣なんだって」
「だって若旦那様、とても楽しそうにデザインなさっていたからてっきり特別な女性に贈るものだとばかり・・・」
「特別なことには変わらないよ。幼い頃からの親友にやっときた遅い春だ。応援しないわけにはいかないだろう?」
一体゛ただの恋する男゛はどこまであやめに関する話題を提供しているのだろうか?
あやめはなんだか頭が痛くなってきた。
「ほら、涼香。お邪魔虫は退散しよう。昔から゛人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ゛って言われるくらいなんだから光治なら爆弾を落としかねない」
隆之介に諭されてシュンとする涼香はただの恋する女だった。
「あやめさんでしたか?今日は嫌な思いをさせてしまって本当に申し訳ない。だが、浴衣に免じて今後とも僕らとお付き合いを継続願いたい。お詫びにその浴衣は無料で差し上げますから」
「お断りします。この浴衣はあやめさんへの僕からの気持ち、はじめてのプレゼントなんだから」
タダであげる、という隆之介の申し出を即座に断る光治は、損得勘定ではなく気持ちを優先する人物なのだろう。
「ごめん、ごめん。冗談だよ。僕からは後日別の着物を贈ることにしよう。そうだ、あやめさん、今度わが社の着物モデルに・・・」
「断る、と言っていますよね?」
キレ気味の光治に背中を押されその場を追い出された隆之介は、最後まで光治の溺甘ぶりをからかっていたようだった。
「あやめ様、思わぬ邪魔が入りお待たせして申し訳ありませんでしたが、そろそろお料理と抹茶のおもてなしが届きます。更にこちらには光治様がわざわざ買いに出掛けた抹茶のケーキもございます。余計なことは忘れてしばし光治様とご歓談頂けないでしょうか」
「わかりました」
田中にエスコートされながら、再度特別席に腰かけるあやめ。
この執事にかかると、あやめは一切抵抗する気力を失う。
叱られた子犬のような潤んだ目は、ふるさとの祖父の印象と重なるだけでなく、ずっと昔に拾って育てていた保護犬にもそっくりだったからだ。
あやめが苦笑していると、すぐ近くに料理の載ったワゴンを押す男性の姿が目に入った。
気づけば昼以降、あやめは何も口にしていない。
美味しそうな香りにあやめが空腹を自覚した時、時計はすでに20時をさしていた。