救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「N島のおすすめ観光は何ですか?」

「えっ、観光ですか?」

光治から至極全うな質問を受け、落胆されるはずだと期待していたあやめは肩すかしを食らった。

「ダイビングやシュノーケリング、ボルダリングなどの体験ができるそうですよ。更にお魚も美味しいとここにかかれております」

有能な田中は、どこからかタブレットを取り出しN島を検索して素早く光治に答えを示した。

あやめの出る幕はないくらい素晴らしい連携プレイ。

「田中、僕の明日からの予定は?」

「土日は元々予定を入れておりませんでしたのでご安心下さい。それから月曜から金曜までの5日間の光治様のスケジュールですが、先程秘書の佐藤に連絡を取りまして、他の役員に振り分けが可能か確認中です。少々お待ち下さいませ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って。何か、この流れだと、光治さんも島に来るつもりに聞こえるのですが?」

ニヤリと笑う光治と田中に、あやめの頭の中は絶望で埋められていく・・・。

「あやめ様、明日は10時のジェット機で島に向かう予定だったのですね?同時刻に当ニューベリーヒルズビルの屋上ヘリポートから島への運航許可を取りました。ですので明日のジェット機はキャンセルして光治様と共に島にお向かい下さいませ」

「ちょ、ちょ、でも明日雨が降ったらヘリは飛びませんよ?それでは困るので確実な方法が・・・」

「ご安心下さいませ。明日の降水確率は0%。風も全く問題ありません」

゛田中はAIか何かなのだろうか?゛

あやめは隙のないくせにあどけない田中にため息をつく。

゛じいちゃんや犬の太郎に似てなければ強気で返せるのに゛

そんなあやめの思いも知らず

「子供の時以来のバカンス楽しみだなあ」

と呑気に笑う光治。

゛まあいいわ。島に行って、自分の目で、ベリーヒルズビレッジ、ううん、都心の華やかさとのギャップにおののいて現実を知ればわかるわ゛

この期に及んでも、あやめは光治と田中があやめを諦めてくれるだろうと信じて疑わなかった。
< 65 / 101 >

この作品をシェア

pagetop