救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「おう、光治。思ったよりも元気そうじゃないか。腸が破れるまで我慢するとは、お前もとんだ道化者だな」

呼びに来た看護師とともに、憎まれ口を叩きながらERに入ってきたのは、光治の父・聖川博志だった。

「この間心臓カテーテル検査をした社長には言われたくありませんね」

薬で痛みが若干和らぎ、日頃の本領を発揮し始めた光治に

「それだけ憎まれ口を叩けるなら大丈夫だな。ワハハハ」

と、からかいを入れる博志は、病院には場違いな面倒くさい存在に違いない。

「おやおや、ずいぶんかわいらしい女医さんだ。君が光治の主治医かね?」

光治の失礼な言葉にも、童顔女医は怒ることなくキリリと対応する。

「はじめまして。私は杜若あやめと申します。当セントヒルズホスピタルで外科医をしています。童顔ですが、一応医長なのでレジデントや研修医ではないですね。聖川さんの主治医はまだ決定していないので、私はここERにおける担当医だとお考え下さい。当セントヒルズの外科医スペシャリストチーム各々のプロフィールはこちらのパンフレットに載せております。後程ゆっくりお読み頂き、ご希望の医師をご指名頂ければ、医師が不在でない限りご要望にお応え致します。それでは、早速ですが・・・」

医長とは役職のないヒラの医師を指すらしいが、見習い医師とは明確に区別されるようだ。

ということは、この杜若も、ある程度経験を重ねた外科医ということ・・・?。

セントヒルズに勤務しているというだけでも十分優秀さをアピールできるステイタス。

光治は、博志が持つパンフレットを読みたくて仕方なくなったが、今は童顔女医の説明に集中しようと意識を傾けた。

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