救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
その後、一行は村営グランドから、祖父の準備した七人乗りのワゴン車に乗って杜若宅へと移動した。

杜若邸は、村の診療所の隣にありあやめの祖父母の家と父の家は同敷地内に建っている。

その二件の間にある広い中庭は、近隣に住む村人をあげてのバーベキューや宴会の会場になることが多く今日もそうなりそうな雰囲気をヒシヒシと醸し出していた。

「おかえり。あやめ」

「ただいま、お父さん」

「ワン!」

「次郎さん!」

白衣を着たままの父・卓次郎に続いてあやめを歓迎してくれたのは豆柴の次郎さんだ。

次郎は昔あやめが飼っていた太郎さんの息子で、杜若家の番犬2代目。

あやめが次郎さんを撫でようと腰を屈めたところで、ようやく光治はあやめの手を離してくれた。

「相変わらず可愛いね。次郎さん」

あやめが次郎さんを撫で回していると

「犬とはいえあやめさんに溺愛されているのを見ると邪魔したくなりますね。次郎さんと戯れるあやめさんは可愛いですが」

と、光治がすかさず割り込んでくる。

゛いや、すでに邪魔してますから゛

犬とのじゃれ合いにまで割り込もうとする光治のヤンデレぶりに、あやめは少し引きそうになっていた。
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