救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「あやめさんがこの島の診療を受け継ぐことが本当に卓次郎さんの一番の願いなのでしょうか?」
光治はあやめに近寄ると、その小さな手を取ってゆっくりと撫でた。
「もちろんです。母のような医療過疎地域の被害者を出さないためにも、こうした小さな島にはすべてにおいて万能な医者が必要なんです」
「一時期は都会に住んでいた看護師の楓さんも離島で出産することのリスクは承知の上で里帰りしたはずです。卓次郎さんだってそれをわかっていて島に帰した。だからこそ卓次郎さんがあやめさんのことを加害者のように思っているとは考えにくい」
淡々と話す光治は、先程までの甘々な様子から一変、堅物な経営者の顔に戻っていた。
「そんなこと・・・現に父は私が医師になることを止めなかったし応援もしてくれた。普通の医師のように一ヶ所で経験を積むことを強要もしなかった」
「それはあやめさんの意志を尊重したかっただけでしょう」
「違う。現に父がいなくなったらここは無医村に・・・」
頑なに首を振るあやめを、光治はキツく抱き締めて言った。
「自分を責めなくていい。その上あやめさんが自分の人生を犠牲にすることはない」
「犠牲だなんて思ってない。勝手に決めつけないで」
「ほら、泣かないで・・・あやめさん」
「・・・!」
あやめはいつの間にか自分が泣いていることに驚いて言葉を無くした。
あやめが人前で涙を流すことなど、末だかつて一度もなかったことだったから。
光治はあやめに近寄ると、その小さな手を取ってゆっくりと撫でた。
「もちろんです。母のような医療過疎地域の被害者を出さないためにも、こうした小さな島にはすべてにおいて万能な医者が必要なんです」
「一時期は都会に住んでいた看護師の楓さんも離島で出産することのリスクは承知の上で里帰りしたはずです。卓次郎さんだってそれをわかっていて島に帰した。だからこそ卓次郎さんがあやめさんのことを加害者のように思っているとは考えにくい」
淡々と話す光治は、先程までの甘々な様子から一変、堅物な経営者の顔に戻っていた。
「そんなこと・・・現に父は私が医師になることを止めなかったし応援もしてくれた。普通の医師のように一ヶ所で経験を積むことを強要もしなかった」
「それはあやめさんの意志を尊重したかっただけでしょう」
「違う。現に父がいなくなったらここは無医村に・・・」
頑なに首を振るあやめを、光治はキツく抱き締めて言った。
「自分を責めなくていい。その上あやめさんが自分の人生を犠牲にすることはない」
「犠牲だなんて思ってない。勝手に決めつけないで」
「ほら、泣かないで・・・あやめさん」
「・・・!」
あやめはいつの間にか自分が泣いていることに驚いて言葉を無くした。
あやめが人前で涙を流すことなど、末だかつて一度もなかったことだったから。