救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
父の願い
あやめが逃げ込んだのは、かつての私室。
小さな頃から使っていたその部屋は、当時のままの状態で残されていた。
無駄に広いベッドにダイブしたあやめは、羞恥に震えながらお気に入りのタオルケットをかぶる。
落ち込んでいることを知られまいとする時のあやめの癖だ。
「そうしていると小さい頃とちっとも変わらないな」
そんなからかいを交えながらノックもせずに入って来たのは、父・卓次郎。
゛そう言うお父さんこそデリカシーがないところは全く変わらないよね?゛
そう、あやめも言い返してやりたかったが今は羞恥の方が勝っていた。
「島の診療所の話だが・・・」
どんな悪態やからかいが続くのかと身構えていたあやめだったが、卓次郎の口から紡がれたのは至極真面目な言葉だった。
あやめはタオルケットの中からそっと顔を覗かせて様子を伺う。
「今、東京の大学の医学部に通っている圭吾くんを覚えてるか?」
もちろん覚えている。
島浦圭吾、現在、医学部4年生の彼は中学校を卒業するまでこの島で育った青年だ。
この島には高校はない。
だから、この島の子供たちは皆、中学を卒業すると本土に行き、寮や下宿に住み込んでそちらの高校に通うことが多い。
数年前、高校に進学した圭吾もそんな1人だった。
圭吾が高校1年生だった当時の夏休み、たまたま父の手伝いと称して実家に戻っていたあやめは、同じく島に帰省していた圭吾と偶然、診療所近くの公園で再会した。
「あ、あやめっちだ。久しぶりじゃん、相変わらずの童顔だな」
「うるさいよ」
島の子供たちは皆、幼い頃からあやめと顔見知りだ。
憎まれ口を叩かれながらも、日に焼けて逞しくなった圭吾を見てどこか親戚の叔母さんのような感慨深さを覚えていたそんなあやめの前で悲劇は起こった。
小さな頃から使っていたその部屋は、当時のままの状態で残されていた。
無駄に広いベッドにダイブしたあやめは、羞恥に震えながらお気に入りのタオルケットをかぶる。
落ち込んでいることを知られまいとする時のあやめの癖だ。
「そうしていると小さい頃とちっとも変わらないな」
そんなからかいを交えながらノックもせずに入って来たのは、父・卓次郎。
゛そう言うお父さんこそデリカシーがないところは全く変わらないよね?゛
そう、あやめも言い返してやりたかったが今は羞恥の方が勝っていた。
「島の診療所の話だが・・・」
どんな悪態やからかいが続くのかと身構えていたあやめだったが、卓次郎の口から紡がれたのは至極真面目な言葉だった。
あやめはタオルケットの中からそっと顔を覗かせて様子を伺う。
「今、東京の大学の医学部に通っている圭吾くんを覚えてるか?」
もちろん覚えている。
島浦圭吾、現在、医学部4年生の彼は中学校を卒業するまでこの島で育った青年だ。
この島には高校はない。
だから、この島の子供たちは皆、中学を卒業すると本土に行き、寮や下宿に住み込んでそちらの高校に通うことが多い。
数年前、高校に進学した圭吾もそんな1人だった。
圭吾が高校1年生だった当時の夏休み、たまたま父の手伝いと称して実家に戻っていたあやめは、同じく島に帰省していた圭吾と偶然、診療所近くの公園で再会した。
「あ、あやめっちだ。久しぶりじゃん、相変わらずの童顔だな」
「うるさいよ」
島の子供たちは皆、幼い頃からあやめと顔見知りだ。
憎まれ口を叩かれながらも、日に焼けて逞しくなった圭吾を見てどこか親戚の叔母さんのような感慨深さを覚えていたそんなあやめの前で悲劇は起こった。