救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
杜若の話を聞きながら、光治の頭の中には゛後悔゛の2文字が浮かんでは消え、浮かんでは消えしていた。

光治の症状は数日前から現れていた。

軽い吐き気と倦怠感。

胃の辺りを押されるようなジクジクした痛み。

連日続いた取引先との飲酒を伴う接待、深夜までの残業、海外出張、etc.

長年の無理が蓄積し、いつまでも若さで乗り切ることはできないことは百も承知のはずだった。

だが、結婚もしていない、子供もいない゛なんなら恋人も不要だ゛と考えているくらいの仕事馬鹿の光治だ。

仕事にかける時間だけはいくらでもあったし、それを咎めてくれる愛しい存在もいなかった。

仕事は楽しい、それ以上にかけられている光治への期待は大きい。

週の初めに感じた謎の違和感。

゛金曜日の夜までに改善がなければ、土曜日の午前中に病院に行こう゛

などと、安易に考えていたことで、軽症ですんだかもしれない虫垂炎は思いの外、重症化してしまったようだ。

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