救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
チュンチュンチュン・・・ミーンミーンミン・・・。

小鳥の囀ずりと蝉の声。

聞き慣れた音は、都心に暮らすあやめにとっては懐かしい想い出の中にあるものだ。

しかし、今のあやめの身体に巻き付く感触には違和感がある。

しっとりとした感触は人肌のようにも感じるが気のせいだろうか・・・?

ゆっくりと目を開けたあやめは、目の前にある端整な顔に驚いて「ひぃ・・・!」と小さく悲鳴を上げた。

「おはよう。あやめ。素敵な朝だね」

爽やかな笑顔を浮かべ、リアル朝チュンを地でいくこの男の名は聖川光治。

堅物シャイニング王子あらため肉食手練れ王子ではないか。

あやめは、昨夜いったい何が起こったのか、全く覚えていない・・・はずだった。

だが夢だと思っていたことが全て現実なら、残念なことに全部覚えている。

誰か嘘だと言って欲しいと思うくらいに。

「僕はこれまで女性には触れるのも嫌で、正直上手くやれるか不安だったんだけどあやめはやっぱり特別だったね。あんなに夢中になるなんて。フフ・・・二人の愛の結晶が実を結ぶといいな」

゛避妊せんかったんかい!゛

酔っぱらって、のぼせ上がって、迂闊にも相手のペースに乗せられて大事な確認を疎かにしてしまった。

だから文句は言えない。

たとえ酔っぱらっていたとしても、あやめの記憶は保たれているのだから。

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