救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「ねえ、何がここまで深層の王子様であるはずの光治くんを駆り立てるのかな」
あやめは今、自分が初めて光治と真剣に向き合っているのだと実感した。
もうすでに結婚式まであげて、体まで繋げてしまった仲なので今さらだが。
理由を知らずに光治と暮らすことは感覚的に難しいと思ったのだ。
「初めはこっちの都合も考えず、他人の健康のためならとグイグイ攻め込んでくるそんなあやめの誠実で嘘のない姿に惹かれたんだ」
ぐさり・・・。
聞きようによっては誉め言葉とも取れる言動が、諸刃の刃となってあやめの胸を貫いた。
゛そうか、人の話を聞かない強引な人物の第一人者は私だったのか゛
結局似た者同士なんだな、と、あやめは妙に納得した。
「患者として関わるうちに、地位や名声なんてちっぽけなものに媚びもせず自分の信念に従って行動している゛あやめ先生゛に惹かれた。そのうちに、あやめの視界にどうにかして入りたい。あやめの頭の中を僕一人で埋め尽くしたい、そう思うようになった。そのためだったら僕が持つ全てを利用することも辞さない、と考えるほどに」
少しでも好意を寄せる相手の言葉でなかったら、さすがにドン引きしそうなヤンデレ発言なのだが、もうすでにあやめは光治に堕ちていたので気にはならなかった。
なるほど、光治をここまで追い詰めたのは自分だったのだなと、あやめが不要な反省をしてしまうほどには。
゛ならば責任を取るべきなのね・・・?果たしてそうなのか・・・?゛
考え込むあやめを背後から抱き寄せる光治は、これまで決して見せることのなかった本音をちらつかせてあやめを煽る。
「本当にあやめが好きなんだ。あやめは僕のことが嫌いなの?」
本当に今さらな質問だが、もしもあやめがそうだ答えたらどうするつもりなのだろうか?
「そうだと言ったら離婚するの?・・・って、婚姻届はまだ出してないから破局って言うのかな」
あやめの素朴な疑問に、光治は慌ててあやめを書斎のデスクに追いやる。
「婚姻届はこれから出しに行くんだ。今さら否やは許されないよ。絶対に竜神さまの怒りを買うよ?ほら、さっさとここにサインして」
慌てふためきながら光治がポケットから取り出した婚姻届は、本当に結婚したいのかと疑問に思うほどシワくちゃになっていた。
「フフ、この婚姻届、めっちゃシワくちゃなんですけど。こんなんで区役所受け付けてくれるのかな?」
「い、いや、なくしたり盗られたりしたら嫌だから大事に持ち歩いていたんだけど失敗した」
オロオロと慌てる王子は本当に可愛い。
「ほら、サインしなくてもいいの?」
あやめはペンを手に取り、フリフリっとその場でペンを振って、サインしてもいいよと意思表示をしてみせた。
不安気な表情から一転、笑顔で尻尾を振る大型犬。
強引な手口で、茨の中から出てこようとしないあやめを連れ出してくれた王子様。
彼との出会いがなかったら、あやめはずっと母の死と父への罪悪感に囚われて、一向に前に進めなかったかもしれない。
あやめの目の前に現れた救世主は、桁違いの御曹司でイケメンだったけど、目の前で愛を囁くこの男はただの純粋で誠実な一人の男だった。
嬉しそうにあやめが記入したシワくちゃの婚姻届を見つめる光治に笑みがこぼれる。
あやめはここに来て、ようやく光治と共に生きていく未来を想い描くことができるようになったのである。
あやめは今、自分が初めて光治と真剣に向き合っているのだと実感した。
もうすでに結婚式まであげて、体まで繋げてしまった仲なので今さらだが。
理由を知らずに光治と暮らすことは感覚的に難しいと思ったのだ。
「初めはこっちの都合も考えず、他人の健康のためならとグイグイ攻め込んでくるそんなあやめの誠実で嘘のない姿に惹かれたんだ」
ぐさり・・・。
聞きようによっては誉め言葉とも取れる言動が、諸刃の刃となってあやめの胸を貫いた。
゛そうか、人の話を聞かない強引な人物の第一人者は私だったのか゛
結局似た者同士なんだな、と、あやめは妙に納得した。
「患者として関わるうちに、地位や名声なんてちっぽけなものに媚びもせず自分の信念に従って行動している゛あやめ先生゛に惹かれた。そのうちに、あやめの視界にどうにかして入りたい。あやめの頭の中を僕一人で埋め尽くしたい、そう思うようになった。そのためだったら僕が持つ全てを利用することも辞さない、と考えるほどに」
少しでも好意を寄せる相手の言葉でなかったら、さすがにドン引きしそうなヤンデレ発言なのだが、もうすでにあやめは光治に堕ちていたので気にはならなかった。
なるほど、光治をここまで追い詰めたのは自分だったのだなと、あやめが不要な反省をしてしまうほどには。
゛ならば責任を取るべきなのね・・・?果たしてそうなのか・・・?゛
考え込むあやめを背後から抱き寄せる光治は、これまで決して見せることのなかった本音をちらつかせてあやめを煽る。
「本当にあやめが好きなんだ。あやめは僕のことが嫌いなの?」
本当に今さらな質問だが、もしもあやめがそうだ答えたらどうするつもりなのだろうか?
「そうだと言ったら離婚するの?・・・って、婚姻届はまだ出してないから破局って言うのかな」
あやめの素朴な疑問に、光治は慌ててあやめを書斎のデスクに追いやる。
「婚姻届はこれから出しに行くんだ。今さら否やは許されないよ。絶対に竜神さまの怒りを買うよ?ほら、さっさとここにサインして」
慌てふためきながら光治がポケットから取り出した婚姻届は、本当に結婚したいのかと疑問に思うほどシワくちゃになっていた。
「フフ、この婚姻届、めっちゃシワくちゃなんですけど。こんなんで区役所受け付けてくれるのかな?」
「い、いや、なくしたり盗られたりしたら嫌だから大事に持ち歩いていたんだけど失敗した」
オロオロと慌てる王子は本当に可愛い。
「ほら、サインしなくてもいいの?」
あやめはペンを手に取り、フリフリっとその場でペンを振って、サインしてもいいよと意思表示をしてみせた。
不安気な表情から一転、笑顔で尻尾を振る大型犬。
強引な手口で、茨の中から出てこようとしないあやめを連れ出してくれた王子様。
彼との出会いがなかったら、あやめはずっと母の死と父への罪悪感に囚われて、一向に前に進めなかったかもしれない。
あやめの目の前に現れた救世主は、桁違いの御曹司でイケメンだったけど、目の前で愛を囁くこの男はただの純粋で誠実な一人の男だった。
嬉しそうにあやめが記入したシワくちゃの婚姻届を見つめる光治に笑みがこぼれる。
あやめはここに来て、ようやく光治と共に生きていく未来を想い描くことができるようになったのである。