誘拐は激甘生活の始まりVI
王族の人が料理が得意なことに杏菜は驚く。リオンは「俺、料理作るの好きなんだ。だって作ってもらうだけじゃつまらないでしょ?」と微笑む。

冷めないうちに食べようか、そうリオンに言われ杏菜とリオンは同時に手を合わせる。そして杏菜はモンティクリストを口の中に入れた。

「おいしい!おいしいです!」

杏菜が笑顔を見せると、リオンは「本当?嬉しい!」とフニャリと笑った。その笑い方はやはり兄弟なのかダミアンに似ている。

ダミアンのことを考えると、杏菜の胸にスッと悲しみが生まれていくのがわかった。ダミアンはまだフランスにいるはずだ。杏菜が日本にいることなど知らずに頑張っているのだろう。

「杏菜、大丈夫?」

杏菜がボウッとしているとリオンに見つめられる。杏菜は「何でもないですよ」と微笑み、食事を再開した。



リオンとの別荘での生活が始まって数日経った。

食事は朝はリオンが用意し、昼は杏菜が用意する。そして夜は二人で用意するというふうになっていた。リオンはダミアンとは違い、杏菜が一人で外に行くことも許してくれる。しかし、杏菜は唇に触れてダミアンのことを考えてしまうのだ。
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