アウトサイダー
明るく社交的な碧人のことは、小学6年生くらいの頃から苦手に感じていた。
ボクみたいに根暗でひねくれた人間とは対極に位置している碧人は、いつも笑顔で、お節介で、無神経だ。
碧人と幼なじみという関係になければ、わざわざ隣に並んで登校することは無いのに。
碧人と仲良くする気なんて さらさらない。
同性愛者のボクにとって、
見目の良い男など、可愛い女性を集めてくれる道具みたいな存在で、ボクが男をどうでもいいと思っているぶん、男にどうでもいい存在だと思われた方が、こちらとしては気が楽だ。
男なんて、ボクにとって“望まない”存在。
明るく、社交的で、美形だから、人気者の碧人は、
ボクの隣にはふさわしくない。
いや、──上から目線か。
ボクが、碧人の隣にふさわしくない、
ということなら、周囲も納得するんだろうか。
学生の姿が多い。
チラチラと碧人のことを見る女子生徒が多いな…。
ポケットの中の携帯音楽プレーヤーを掴み、聴いている曲の音量を上げる。
サビ前の高揚感につられるように、ボクの気持ちも昂る。
友達の、天宮 志悠(あまみや しゆう)の姿が、前髪越しに目に飛び込んできた。
志悠の声を聞きたい。
するりと、耳からイヤホンが転がり落ちた。
そこかしこで学生の話し声。
ガヤガヤと、うるさい。
イヤホンを携帯音楽プレーヤーに巻き付け、鞄にしまう。
「糸、天(あま)ちゃん居るよ」
つんつんと、隣にいた碧人に肩をつつかれた。
そんなの、とっくに気づいてる。
「ん」
ただ頷いて、ボクは歩く速度を速めた。
大股で、碧人もついてくる。