今日も、私は瀬那先生を誘惑します。
かわいい生徒だって、はっきり言われてしまった。
生徒としての好き。
好きは好きでも、それじゃあ全然嬉しくない。
「……んで、これがこうなってこうなる。ど?わかった?」
申し訳ないほどに丁寧に教えてくれた解き方も今の私の耳にはまったく入ってこず……もう一度聞き直してしまった。
何回か教えてもらったあと、なんとか1人で解けるようになったので、特別なマンツーマン補習授業はそこで終了した。
「呉羽なら大丈夫。明日のテスト頑張れよ」
私の気も知らないで、瀬那先生は先生らしい言葉をかけてくる。
「明日のテスト頑張ったら、ご褒美くれる?」
「……ご褒美か。じゃあ、満点だったらいいよ」
「いいんですかっ?」
「いいよ。アイス?あ、タピオカ好きなんだっけ?」
「じゃあ、私が明日のテストで満点とったら……私のことをひとりの女性として見てください」
私は瀬那先生の返事を聞く前に、得意の言い逃げをした。