今日も、私は瀬那先生を誘惑します。
「門奈くん、ありがとう」
横顔でもわかる、呉羽が笑顔を門奈に向けている。
それを見て、腹が立った。
自分の生徒になんで妬いてんだ俺は。
荷物を持ってくれたらお礼言うだろ。
そんで笑うだろ。
「もう半分は俺に貸しな」
しかし、俺の体は勝手に動いていた。
そう言って俺は呉羽の持つ資料を横から奪い取る。
俺に気づいた呉羽は驚いた顔をした。
資料の名前を見る限り、社会の資料だとわかった。
「あとは俺と門奈で運んでおくから、呉羽は戻ってお昼食べてな」
呉羽と他の男を2人きりにするのは死ぬほど嫌だから、それなら俺が雑用係を担ってやろう。
「ううん。私が頼まれたことだから、最後までちゃんとついていきます」
「……そうか、わかった」
しかし、呉羽はそう言って、門奈と俺のところから少しずつ資料を持って先を歩いた。
真面目で責任感の強い呉羽だから、そう言われてすぐに納得した。
……こういうところが、呉羽の魅力だと思う。
【 瀬那 side end 】