今日も、私は瀬那先生を誘惑します。
先生と生徒の壁は思ったよりも大きかったみたい。
「実は、昨日、門奈くんに告白されました」
「……」
「瀬那先生は、私と門奈くんが付き合ったらいいなって思ってるんだね」
ここでわざわざ言うことではないかもしれない。
でも、今の私は自暴自棄になっているようで……口が勝手に動いてしまった。
これ以上瀬那先生の気持ちを知りたくない。
傷つきたくない……。
瀬那先生の顔が見えないように、私は目の前のノートをひたすら見ていた。
「私、瀬那先生のことが好き」
「……」
「でも、もう先生のこと好きなのやめます」
「……」
「これ以上、迷惑かけません」
ウソの言葉が口から出るたびに、目からは涙が溢れ出そうだった。
泣いちゃだめ。
こんなところで泣いたらだめだ。
必死に自分の気持ちを抑え、ノートや筆箱を雑にかばんに押し込んだ。