今日も、私は瀬那先生を誘惑します。
なんとか涙は止まったものの、触った感じでは目が腫れているのがわかる。
今の状態で家に帰れないな……。
だからといって、1人でどこかに行く気にもならないし、誰にも会いたくない……。
私は、目的もなく適当に廊下をとぼとぼと歩いていた。
涙で目がかすみ、前がよく見えず……誰かにぶつかってしまった。
「ごめんなさい……」
泣いていたのがバレないように、目線だけ上にあげると……目の前には伊吹くんがいた。
「呉羽?」
「伊吹くん……ぶつかってごめんね」
「……呉羽は、大丈夫?」
私の不注意でぶつかってしまったのに、伊吹くんは私の心配をしてくれた。