今日も、私は瀬那先生を誘惑します。
「ちょっと当たっただけだから、私は大丈夫だよ」
「……いや、そうじゃなくて」
「え?」
「なにかあった?」
伊吹くんとはあんまり話したことないはずなのに、さすがにいつもの私と違うんだとバレてしまったみたい。
「好きだった人に振られちゃって……」
ちゃんと話したこともないのに、伊吹くんの優しさのせいで、つい本当のことを言ってしまった。
「……そうか」
「うん……」
「美術室なら基本空いてると思うよ」
「……え?」
「人もあんまり通らないから、1人になりたいなら最適かなって。余計なお世話だったらごめん」
泣き顔みられたかな。
伊吹くんは人の気持ちを読み取るのが得意なのか、完全に私の気持ちを読まれている。
1人で泣きたいことを理解してくれたのか、それ以上詳しく聞くこともなく、おすすめの場所を教えてくれた。