今日も、私は瀬那先生を誘惑します。


「ありがとう。蛍には、私から連絡するからこのことは内緒にしてもらっても……」

「蛍には言わないから安心して」



伊吹くんは「じゃ、暗くなる前には帰りなよ」と……私をその場に残していった。



いつもは全然しゃべらないからどんな人なのかわからなかったけど、この短時間で、伊吹くんが優しい人なんだってことは伝わった。



蛍の彼氏がこの人でよかったと……改めて思えた。



私は伊吹くんに教えてもらった美術室に向かった。



美術室は鍵も空いていて、誰もいなかった。



本当は勝手に入っちゃだめなんだろうけど……今日だけならいいよね?



神様、もし見ていたら今日だけはどうか見逃してください……。

あと少しだけ1人になって悲しさを爆発させたら、もうこんなことはしません。

明日から前を向いて学業に励みます。



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