今日も、私は瀬那先生を誘惑します。
「さっき、私に変なことしちゃいそうでって言ってましたよね……」
「うん」
「……しても、いいですよ……」
瀬那先生の視線は私から動かないまま、スマホがテーブルに置かれる音がした。
「呉羽……それは、俺になにされるか、わかってて言ってる?」
瀬那先生の声がいつもよりも低い。
その声を聞いて……自分の言ったことを少しだけ後悔した。
瀬那先生の目は完全にウサギを狙うオオカミそのもの。
瀬那先生がなにをしようとしているのか……だいたいわかる。
わかっているつもりだ。
だからこそ、わざとあおった。
「……せっかく2人きりになったんですよ。私は、もっと近くにいたいです……」
テレビの雑音だけが聞こえる部屋の中。
自分の心音があきらかに大きくなっているのがわかる。