今日も、私は瀬那先生を誘惑します。


「あ、呉羽じゃん」



そう言って白い歯を見せて笑ったのは……この前一緒に迷子になった瀬那先生。



悔しいけど、相変わらず顔はかっこいい……。



私は「ども」と小さく挨拶だけして、先を進もうとした。



「ちょっと待て」

「……え?」

「貸せよ」



しかし、瀬那先生にそう呼び止められたため、それ以上は進まなかった。



え?貸せよって、どういうこと?



瀬那先生の言葉に疑問を抱いていると……急にふわっと背中が軽くなった。



瀬那先生は蛍の脇を持って一旦私から引き剥がすと、自分の背中へ上手く蛍を移動させた。



そして、そのままおんぶをして歩き出した。

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