今日も、私は瀬那先生を誘惑します。
《どうしたの?》
仕事中なのにも関わらず、電話に出てくれたお母さん。
「瀬那先生の看病してて、気づいたら寝ちゃっててね……。こんな時間だし、危なくて1人では帰らせられないって瀬那先生が。お父さんって迎えに来れるかなぁ?」
《あら〜。お父さん今日から出張なのよ》
「そうなの⁉︎じゃあ、どうしよう……」
《私もまだ帰れそうにないし……だからって1人で帰らせるのは心配だなぁ》
お母さんもお父さんも、私が小さいころから仕事人間だ。
中学生になってからは夜に2人がいないのは多々あった。
それが私たちにとっての日常なので、特に寂しいとは思わない。
《つむぎ、明日は学校休みだよね?》
「そうだけど……」
《じゃあ、泊まってくれば?》
「えっ⁉︎と、泊まり……⁉︎」
《瀬那くん、今電話出られる?》
「いや、でもね、お母さん……っ」
《つむぎ、瀬那くんに代わってくれる?》
お母さんがたまに出す怖い声。
これを聞いたときは、100%お母さんの言うとおりにしたほうがいい。
仕方なく……私は瀬那先生に電話を代わってもらった。
お母さんとなにかを話している瀬那先生。
「はい。わかりました。また連絡させます」
そのあと、再び電話を私が代わった。
《瀬那くんの承諾もらえたから。今日は泊まってきなさい》
「えっ⁉︎本当の話⁉︎」
《つむぎがいやなら別にいいのよ。お母さんの仕事が終わるのを待っててくれればいいだけだし》
「いやとか、そういうわけじゃないけど……」
《なら、決まりね。瀬那くんによろしくねー》
「えっ、ちょっ、お母さん……!」
プープー……と電話が切れた音がする。
こうして、私は瀬那先生の家に泊まることになったのでした。