今日も、私は瀬那先生を誘惑します。

「つむぎ、くっつくのやめろ」



顔も見ずに、そう言った。

さすがに言い方が冷たかったか……?


しかし、なにも言わずにつむぎは静かに離れた。



……背中越しだけど、泣いているのがわかる。

あー……なんでこうなるんだ、泣かしたいわけじゃないのに。



気持ちをコントロールできない自分にイラついて、思わずため息が漏れる。

その間も、鼻をすする音が聞こえる。



俺は、ゆっくりとつむぎの方を向いた。

つむぎは毛布を顔まで被り、声を押し殺して泣いていた。


自分が泣かせてしまったことにより、俺は、ものすごい罪悪感に駆られた。



「つむぎ」

「……」

「顔出して」

「……やだ」



弱々しい声を出す、子どもみたいなつむぎ。



毛布は案外簡単にはがれ、その中からは……目に涙をためたつむぎが出てきた。

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