今日も、私は瀬那先生を誘惑します。

とにかく走った。

心臓を誰かに揉まれているかのような気持ち悪い初めての感覚。

それに気づかないふりをするように……私はとにかく教室まで走った。



教室で女の子たちと話している蛍に思いっきり抱きつく私。



「つむぎ……?どうした?」



教室内が少しざわつくのがわかる。

……でも、みんながいる前で瀬那先生のことは言えない。



「次の授業、サボろっか」

「……え……?」

「たまにはいいでしょ。さ、空き教室でも探しに行きますかぁ」



蛍は私の異変を感じとり、いろいろ察してくれた。

私の腕を強引に引っ張る蛍についていく私。

私たちは空き教室を探す旅に出かけた……。



前に伊吹くんに教えてもらった美術室へ行ってみることにした。

運が良く、授業中でもなく鍵も空いていた。



「……じゃ、なにがあったか言ってごらん?」



美術室の四角い小さな木のイスに向かい合う形で座る私と蛍。

今にも泣きそうな私の両手を、蛍はギュッと握りしめてくれた。

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