今日も、私は瀬那先生を誘惑します。
私は、完全な悲劇のヒロイン。
……こんなはずじゃなかったのに。
もう雨なのか涙なのかもわからない。
現実にこんなこと起こるんだなぁ。
でも、今の私にはちょうどいいかもしれない。
強く雨に打たれることで頭が冷やせる。
雨の冷たさで感覚がまひして、余計なことを考えなくて済む。
駅の近くまで……歩いてきた。
瀬那先生は追いかけてこない。
心配して追いかけてきてくれるかもと少しでも期待した自分に腹が立つ……。
「ねぇねぇ、そこのびしょびしょのお姉さん!」
こんな大雨の中びしょびしょのお姉さんなんて私しかいないだろう。
こういうときに限って冷静に考えることができる。
呼ばれたからには……と、私は勢いよく振り返る。
けど、相手は見知らぬ金髪でスーツを着た派手な男。
あぁ……この人が瀬那先生だったらどれだけうれしかったか。
心底そう思う。