今日も、私は瀬那先生を誘惑します。

だって……お父さんがつむぎのことを大事に思う気持ちはわかる。

手塩にかけて育ててきた娘を大切にしてほしいと思うことは、親として当たり前のことだと思う。



俺の気持ちが本気だとわかってもらうためにも、俺の中でけじめをつけるためにも、お父さんとの約束は守りたいと思っていた。



……本音を言えば、今すぐこの場で抱いてしまいたい。

言葉では伝えられないこの気持ちを、つむぎの体で感じてほしい。


だけど、それでも最後まではしないことが、俺にとってはつむぎと付き合っていく上でのけじめなんだ。



「待たなくてもいいんだよ。私はもう心の準備できてるか……」



なのにこのバカつむぎは、さらに俺のことを煽(あお)ってきた。

手が震えてるの見えてんだよ。

心の準備なんてできてないくせに。



俺がどれだけ我慢してると思ってんだよ……。

俺はさすがに手に負えなくなり、大きなため息が出た。

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