気付いたらゴーストでした。

「そっか……。名無しの権兵衛さんなのね……。
 ゴンベはちょっと可愛くないから、ゴーストの……。あっ! ゴウくんって呼んでもいい?」

『……いいですけど。安直ですね?』

 無表情のままで呟くと、お姉さんーー花純さんは、う、と嫌そうに顔を歪めた。

「なんて言うか。ゴウくんって全然子供らしくないよね?」

『そうですか?』

「そうよ。見た感じはとっても可愛い顔してるのに、妙に冷めてるって言うか。現実的って言うか。
 敬語が完璧なのは凄いけど、笑顔がないのは駄目よ。子供ならもっと子供らしく笑わなきゃ」

『……と言われても、もう死んでますけどね』

「それでも今私と会話できてるでしょ?」

『はい、まぁ…』

「淡々と物事を分析するのも、きっと生活環境からくるクセなのね。
 敬語の使い方からしてゴウくんは育ちが良さそうだし、言葉の知識も豊富。どこかお金持ちのご子息なのかしら?」

 花純さんはブツブツと呟き、そばに置いた鞄の中から一冊のノートを取り出した。

 右手に持ったシャープペンシルで、僕の情報を箇条書きに並べていく。

< 10 / 91 >

この作品をシェア

pagetop