気付いたらゴーストでした。
『花純さんは専門学生って言ってましたよね? どんな分野の学校ですか?』
彼女は目線を上にあげ、階数表示を確認すると、「あ」と呟いた。
「着いたから後で教えてあげるね?」
エレベーターの扉が開き、僕は無言で頷いた。
一階はカフェテリアになっていて、そこそこの人で賑わっていた。
主に学生中心といった感じで、大人の人は少人数だ。
やはりみんな、僕が見えていないらしい。
僕としては出来るだけ他人とぶつからないよう避けて歩くのだが、するりとすり抜けられると、それも意味のない行為だ。
「座って待ってて?」と小声で囁かれるが、花純さんが離れるとやはりある程度の距離で引っ張られた。
あれ? でも……。
昨夜よりかはその距離が伸びている。白い糸という名のリードが伸ばされた事に、また不思議を感じる。
「お待たせ〜」
トレーに朝食を載せた花純さんが席に戻って来て、ようやく椅子に座った。
朝食はパンやスープ、サラダがセットになった洋食だった。
何か話をしたいけれど、花純さんはとにかく食べる事と観察する事に夢中だった。