気付いたらゴーストでした。

 手と口を動かし、キョロキョロと周囲を確認している。時折なにかを考え、ウンウンと頷き、口角を上げる。

 僕は黙ってそんな彼女を見つめていた。

 やっぱり変な人だ。

 見た目の可愛さを裏切る変人だ。

「ごめんね、私だけ食べちゃって」

 エレベーターの上ボタンを押し、花純さんがヘラっと笑う。僕は『いえ』と答えた。

『花純さんが大食らいなのはよく分かりましたから』

 彼女は無料券の分を食べ終えたあと、「足りないな」と呟き、おにぎりを買って食べていた。しかも二個も。

「ゴウくん知らないの? 朝はしっかり食べなきゃダメなのよ?」

 にしても、食いすぎだ。

 一体その細い体のどこにあれだけのご飯が入るんだ?

 エレベーターの扉が開き、僕は彼女に続いて乗り込んだ。

 八階の部屋に戻り、彼女はいそいそと出掛ける準備を始める。

「ごめんね。ゴウくんの事、いろいろ調べてあげたいんだけど……帰ってからでもいいかな?」

『……え?』

 何の事を言っているんだろうと思い、首を傾げる。

「ほら、昨日寝る前に言ったじゃない?
ゴウくんと同い年の子の死亡事故の記事がニュースになってるはずって。
 学校が終わったらちゃんとパソコンで調べるから、それまで待っててね?」

『……』

「何かしら成仏できる方法が、絶対あるはずだから!」

『あ……はい』
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