気付いたらゴーストでした。

「あ。さっき、私に聞いたよね? 何の分野の学校だって」

『あ、はい』

「コレよ?」

 花純さんは黄色やオレンジの縦縞が入った大きめのトートバッグから、分厚い紙の束を出した。

 それを広げて僕に披露してくれる。

 あ、と口をポッカリ開ける。

『漫画、ですか?』

 花純さんが出したのはいわゆる漫画の原稿用紙だった。

「そそ。少女漫画。私、漫画家になるのが夢なの」

 そう言って花純さんは二ヘラっと笑う。

 少女漫画と言うからに、恋愛がベースとなる物語を描いているらしい。

『へぇ。すごいですね……』

 専門的な事は分からないが、絵はかなり上手いと思った。

 一ページを五、六個の絵に分けて、繊細な線で女の子や男の子を描いている。

 黒いインクだけで描かれたページと、グレーのシールみたいなやつが貼られたページとがある。

「コレはスクリーントーンって言って、トーンが貼ってあるのはほぼ完成でね? ペン入れしただけのページと下書きだけのページと、まだまちまちなのよ。
 カラス(ぐち)も途中だし、もっと頑張らなきゃねぇ〜」

 花純さんは専門用語を並べてため息をつく。

『カラス口ってなんですか?』
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