気付いたらゴーストでした。

 きっとオレより子供っぽい。

 僕は彼女を見つめ、唖然とした。

 ぎゅって……て。

 この体勢で抱きしめられたら、僕の顔は間違いなく花純さんの胸にダイブする。

 いいのか? それで。

 可愛いと言われて喜ぶべきかも分からない。

 なんか色々と、調子が狂う。

『花純さん。多分、天職だと思いますよ?』

 え、と目をしばたたせ、彼女がキョトンとする。

 続けて『漫画家』と答えると、花純さんは頓狂な声を上げて僕を見つめた。

 僕個人の見解だが。

 漫画家とは、一風変わった人じゃなければなれない職業だ。

 すなわち、変人の彼女にはぴったり。

「やだなぁ、ゴウくんってば! そんなお世辞っ!」

『……いや』

 別に褒めてないです。

 彼女が喜んでいるので、僕もあわせて作り笑いをした。

 *

 九時から授業の始まる彼女について、僕も専門学校へ向かう。

 花純さんは漫画学科の二年A組だ。

 一限が九十分の授業なので何度も欠伸をもらしながら、彼女のそばでその作業を見守っていた。

 人間の体を見て描く人物クロッキーという授業もあれば、一つの単語から発想を広げていく授業もあった。

 発想の転換、これは中々に興味深かった。
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