気付いたらゴーストでした。
 例えば"穴の空いているもの"というお題を出されたら、ひたすらに穴の空いたものの単語を並べて書いていく。

 そして隣りの行には"熱いもの"、その隣りの行には"暗いもの"と三つのキーワードをできるだけ出して並べる。

 その中からキーワード三つを選んで物語の筋を組み立てる作業、いわゆるプロットというものを書いて先生に提出していた。

 花純さんは、五円玉とマッチと洞穴をチョイスしてファンタジーな話を作っていた。

 普段は恋愛ものばかりを妄想しているらしいが、別のジャンルを考える事も出来るようだ。さすがに漫画家を目指すだけの事はある。

 花純さんは日頃から色々な事に興味を持ち、至るところにアンテナを張り巡らせている。

 気になる言葉が有れば、手持ちの電子辞書で調べるクセまである。

 通称「ハヤトくん」だ。

 今どき電子辞書にまで名前をつける女子なんて見た事がない。

 変人だけど、それでも見ていて飽きない魅力が彼女にはあった。

 *

「うぅ〜ん……。こうして見ると、交通事故ってそこら中で起こってるのねぇ」

 花純さんは黒とピンクのマウスをカチカチとクリックしながら、ため息をついた。

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